【社会人大学院の選び方】大学院を決めるための3つの観点

「社会人大学院にいきたいが、どうやって選んだら良いかわからない」

何名かに、社会人大学院を検討しているという相談をもらいました。
その際に考えたりお話したことをまとめておきます。社会人大学院を検討中、今まさに探し中という方の参考になれば幸いです。(国内大学院を探している方向け)

ちなみに私は現在、筑波大学大学院のカウンセリング学位プログラムに在学中で、普段はキャリアコンサルタントとして活動しています。自身の経験も踏まえつつ、キャリア的な観点も織り交ぜながら説明していきたいと思います。

社会人大学院を選ぶために必要なこと、今回は3点にまとめました。
4点目はおまけです。

社会人大学院にいく目的を明確に

まずはあなたが社会人大学院進学を考えた理由に目を向けてみましょう。

どうして大学院にいきたいと考えましたか?
きっかけや、誰のどのような影響がありますか?
大学院以外に選択肢はありますか?その中でも大学院が良いのはなぜでしょう。
大学院と考えた際に、真っ先に浮かんだ大学院や先生はいますか?

会社や組織からの命令だったり、仕方なく、という方も
なぜ大学院にいかなければならないのか
会社や組織から求められていることは何か
自分は何を学んでみたい、研究したいと思うか
など、考えてみてください。

この理由はまさに千差万別です。同じように大学院を志す目的も一人ひとりバラバラです。
実践を研究につなげること自体にワクワクする!という人もいれば、学歴をアップデートしたいという目的をもった人もいると思います。他の人のエピソードや理由、進学目的を聞いても100%自分にフィットすることはありません。私のエピソードも大学院受験記にまとめてありますので、参考までにどうぞ。

最終的には「自分の進学理由・目的を満たすことができる大学院なのか」という点が重要になってきます。まずは自分のことを考えてみてください。

実際にどんな大学院があるかを調べる

自分が社会人大学院にいく目的を考えたら、それを満たすことができる大学院が世の中にどれだけあるのかを調べます。

この段階で、〇〇先生の下で学びたい、〇〇大学院でしか行っていない研究内容を研究する、というように大学院が必然的に決まってくる方もいると思います。そういう方は飛ばしてください。

最初は自分が気になっている大学院や聞いたことがある大学院を調べると良いと思います。私の場合調べた内容はスプレッドシートにまとめていました。

受験する可能性のある大学院をピックアップしながらスプレッドシートで表を作成しました。
大学・対象研究科のビジョンや主な研究内容、知っている先生、定員数、入試・受験申請期間、試験内容、入学料・学費などを拾っていきました。
進学後も変わらず宮城を拠点にするつもりだったので、通いやすさ(授業のオンライン対応含め)といった点も考慮に入れたのは地方住みならではの観点かもしれません。
社会人大学院合格記より

最後にあるように、自分にとって大切なポイントを観点に入れておくことが大切だと思います。

ちなみに私が上記のリスト作成をして驚いたのは学費です。
国公立大学はほぼ同額なのですが、私立大学になると学費にかなり違いがあります。国立大学院が年間約50万円強に対し、200万近い私立大学院もありました。海外大学院に至っては(円安も相まって)数百万円というのも当たり前のように存在します。

知っている大学院をある程度調べたら、今度は先生から調べるという方法もあります。自分が興味のある内容、やってみたい研究分野を扱っている先生がいるかを調べます。

日本の研究.com といったサイトで自分の興味あるワードを検索してみると、該当する研究者が出てきます。その方の研究内容を見てみたり、所属大学を覗いてみる形で大学院を調べることができます。同様にGoogle scholarというサイトは研究を調べることができるので、興味のある研究論文を読んだり、研究者の先生を調べて所属大学を調べるということができます。

大学院では学部名よりも先生の研究内容で選ぶ人も多いと思うので、こうした形で調べることで「第一人者の先生が他の大学院にいたことを知らなかった」という見落としを避けることもできます。

あとは実際に研究計画書を作成する際に読む論文や本などから、先生や大学院を知ることもできるので、大学院を探しながら研究計画をざっくりと考えてみるのも良いかもしれません。

 

研究・大学院への関わり方を広げる

ここまでで行きたい大学院が明確になった方は、あとは受験準備を進めていけばOKだと思います。ただ、研究のハードルの高さを感じたり、自分のワークスタイルで本当に大学院生もできるか不安になっている人も多いと思います。このパートではそんな方向けに、いきなり大学院生になる以外の方法を取り上げます。

大学院について調べてみると、「科目履修生」「聴講生」「研究生」といった言葉を見ることがあります。これは大学によってばらつきがあるのですが、一つの授業単体で履修することができる制度です。参考までに私の所属する筑波大学大学院のページを貼っておきます。

https://www.tsukuba.ac.jp/education/other-auditors/in/

科目等履修生制度について
科目等履修生制度は、大学が社会人等に対しパートタイムによる学習の機会を拡充し、その学習の成果に適切な評価を与えようとするものであり、生涯学習の一環ともされる制度です。


私も筑波大学院に入る前に母校の授業をいくつか科目履修しました。
そこで統計や発達心理学について学んだのですが、現役の大学院生の方々と授業を受けることができるので学生さんの雰囲気もよくわかり、先生ともお話ができるので非常に情報量が多かったです。

受講させていただいた先生に「こんな研究をしたいのですが…」と壁打ちさせてもらい、研究可能かも相談させてもらいました。残念ながら母校での研究は断念したのですが、もしこのプロセスを経ずに入学していたら、やりたい研究ができず途方にくれていたかもしれないことを思うと、大切な時間でした。

なんとなくいいなと思える大学院や先生が見つかったら、こういった制度を使って履修してみることをおすすめします。もちろんそのセミナーや講演会も良いと思いますが1度きりのものが多く時間も限られていると思いますので、情報量やコミュニケーション、実際の大学院の雰囲気を感じるという意味では科目履修がベストだと感じています。


その他・・・共同研究の可能性

上記の制度以外に「共同研究」という形で研究に携わることもできるかもしれません。
ご自身の実践内容をより専門的に検証したい、新たな知見を発見するといった目的で、大学の先生と研究、発表するというケースです。この場合は実践者として研究に携わることになりますし、研究成果も連名で発表されます。

このプロセスに参加する中で研究的手法や考え方に触れることができると思います。
いきなり自分が大学生になるのではなく、共同で研究したいと言ってくれる先生や大学がないかを模索するというのも一つの方法だと思います。ただし共同研究自体にもお金がかかったり、なかなか協力してくれる研究者と巡り会えないという課題もあると思われます。

迷った時は・・・

ここまで検討してくると、自分にとってのベストな選択肢や優先順位が見えてくるのではないかと思います。ぜひ自分にフィットする大学院を目指して準備を進めてください!

まだもやもやを感じるようでしたら、ここまでの要素の何かがはっきりしていない可能性があります。
ここまで考えてこられた方には、何かしら行動を起こすことをおすすめします。
「とりあえず」でいいので、以下のような活動をされるのはいかがでしょうか。

時間があるときに大学院情報を調べ、シートにまとめていく
社会人大学院生のブログや記事、Youtubeを見て、自分の心の動きを観察する
研究してみたいと思うキーワードをGoogle scholarで検索し、どんな先生が研究されているのか、どのような内容の研究があるのかを探してみる
研究してみたい内容を研究者や修士・博士をもつ友人にしゃべってみる

行ってみたい大学院の最も興味がある授業を科目履修生や聴講生として受講する
教わってみたいと思う先生の講演会やイベントに参加してみる
学会に一般参加者として参加し、いろいろな発表を聞いてみる
興味のある領域の専門書を本屋さんに見に行ってみる

こうした行動をとってみると、何かしら自分にフィードバックがあるはずです。わくわくが止まらなくなる人もいれば、お腹いっぱいになって距離をおきたくなるかもしれません。どんな反応があっても意味のあるフィードバックです。「本当は自分がやりたいと思うことではなかった」と先に気づけるのは時間的にも労力的にも貴重です。

キャリア形成をしていく上でも、こうした一歩踏み出してライトにやってみる→体験やフィードバックを振り返るということがとても重要です。
身近にお話しする人がいないなー、という方はぜひ私までお声がけください。
私の行っているキャリア開発の一環としてという形にはなりますが、どんなキャリアプランを描くか、そのために大学院進学やアカデミックとの関わりをどうするかを一緒に考えます。

ここまで長文になりましたが、読んでいただきありがとうございました。大学院進学以外にも研究と携わる方法は多々あると思うので、今回拾いきれなかった部分はまた次回以降の記事で取り上げてみたいと思います。