【社会人大学院受験記】
年始の記事でも少し書きましたが、2022年4月より
筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群
カウンセリンング学位プログラム(博士前期課程)
に進学します。
受験勉強に際して、一緒に勉強した仲間、アドバイスいただいた先達の方々、応援いただいた皆様に感謝し、今後一層精進し恩返しできるよう努めたいと思います。
大学院進学を周囲へ報告すると
「なぜ大学院にいくのか」
「大学院選びはどうしたのか」
「どんな受験勉強したのか」
といった質問が多かったため、記憶が鮮明なうちに受験記として残しておこうと思います。
最初は私の想い・思考ベースだったのですが、書いているうちに具体的な内容も含むお話になってしまいましたので、中盤からは社会人で大学院を検討中の方やこれから受験勉強をされる方向けかもしれません。
あくまで個人的な体験談で、我流の勉強法であることをご承知の上、ご興味ある方はご笑覧ください。
Contents
なぜ大学院に行こうと思ったのか
おそらく一番いただいた質問です。
個人的な思考や価値観が反映される点ですが、参考までに。
少し時を遡り、私の大学生時代(2010〜2014)
研究もある程度まじめに行っていましたが、それ以外にも部活やバイト、長期インターンに教育実習と、いろいろなことに夢中でした。
研究を一生やっていこうという思いはなかったため大学院進学は考えず、悩んだのは学校の先生になるか(公務員試験を受けるか)民間就職をするかということでした。
そんな私が大学院進学を考え出したのは2018年頃。
東北にUターンし、キャリアモデル開発センター仙台という個人のキャリア支援を行う事業準備を始める中で、「キャリアのプロフェッショナル」としてやっていきたいという想いが浮かび、いつかは大学院にいきたいなとうっすら思い描くようになりました。
2019年には株式会社Palletのお仕事でデータ分析にも携わることになり、母校の東北大学大学院の科目履修生として統計学などの授業を学び直しました。その時お世話になった先生方に大学院で研究してみたいこと、興味のあるテーマを相談させてもらったのですが、当時は私のやりたいテーマが「成人の成長・発達に関わること」というとてもざっくりとしたテーマだったため、先生方を困らせてしまう結果になりました。(そんな状態の私に親身に相談に乗っていただいた先生方には感謝しかありません。筑波大学大学院への進学をご報告した際にもとても温かいメッセージをいただき本当に感動しました。)
興味のある研究テーマを具体化する必要性を痛感、成人・社会人を対象とするには教育学部では難しそうであることも感じ、他の道を模索し始めます。
そんな時に偶然見つけたのが筑波大学大学院が開催していたエクステンションプログラム(学外の人向けに専門的な講座や授業を開催しているプログラム)の一つで、「キャリアプロフェッショナル養成講座」というものでした。
キャリアコンサルタントの有資格者向けの講座だったため、授業を受けることで自身の専門性を高めつつ研究テーマの深堀ができそうであったことと、コロナ禍によってフルオンラインでの講座になっていたことからすぐに申し込みました。
当時申し込みの際に書いた志望動機にもはっきりその理由が書いてありました。
2点目は、自身の研究領域、学習領域の明確化を図りたいということです。・・・今回キャリアに関するプロフェッショナルの先生方が担当されるということを拝見し、参加することで自身の専門性に近い領域の研究内容や課題を知り、今後の研究テーマを明確化していくことができるのではないかと考えております。
ありがたいことに講座(第6期:2020年10月〜2021年3月)に参加させていただき、密度十分、多様性に富む授業・先生・仲間との出会いの中で興味がある領域が徐々に明確になっていき、自分で研究したいという想いも強まっていき、講座の終盤には大学院に進学することを決めていました。
受験する大学院をどのように選択したのか
ある程度研究したいことが言語化され始め、進学する大学院を検討する段階に入ると、筑波大学大学院をはじめ知り合いが通っている大学院や、研究したい領域と関係しそうな大学院はいくつか浮かんできました。
このタイミングでは海外の大学院も調べ、社会人で留学されている方のブログも拝見していました。調べたことで海外大学院の入学ハードル(資金面、学力面:主に英語能力)の大きさに圧倒されるとともに、私は現在の仕事(実践)を継続しながら学ぶことを念頭に置いていたため、海外大学院での学びはこの時点で候補から外れました。
受験する可能性のある大学院をピックアップしながらスプレッドシートで表を作成しました。
大学・対象研究科のビジョンや主な研究内容、知っている先生、定員数、入試・受験申請期間、試験内容、入学料・学費などを拾っていきました。
進学後も変わらず宮城を拠点にするつもりだったので、通いやすさ(授業のオンライン対応含め)といった点も考慮に入れたのは地方住みならではの観点かもしれません。
それらを並べ、どこで学びたいか、現実的に学ぶことができるかを検討し、最終的には「ここを選ばない理由が見つからない」という理由で筑波大学大学院の受験を決定しました。
大きな理由としては、実際にキャリアプロフェッショナル養成講座を通して先生方の専門やお人柄を知り信頼感を感じたということと、「成人のキャリア」を研究分野として扱えること、定量的な研究だけでなく定性的な研究もされていて卒業生にもそうした研究をされている方がいらっしゃったこと、などがあります。実際に養成講座に参加していなければわからないことばかりだったので、参加できてよかったと思います。
こうして、受験する大学院を最終的に決定したのが2021年の2月頃でした。
大学院の選び方に関しては聞かれることが多かったため、こちらにまとめました。
→【社会人大学院の選び方】大学院を決めるための3つの観点
受験勉強
受験校を決める前から心理系の大学院を受験するだろうというざっくりとした方向性はもっていたため、受験の際に英語と心理学知識が鬼門になるだろうことは予想がついていたので、2020年の11月頃から心理学英語を市販の教材を用いて勉強していました。(実際に使っていた本を貼っておきます)
1日30〜1時間程度、英語を日本語訳し回答とすり合わせ、わからない単語や心理学知識を調べます。そうすることで英語と心理学の基礎知識をまとめて得ようとしました。
2021年2月に受験する大学院を決めてまず初めに行ったのは過去の試験傾向の調査でした。過去3年分の試験問題と、昨年の出願書類についてはHPにも載っているため、そこをチェックしました。
ここからは「入学試験」に向けての勉強と出願書類である「研究計画書」の2つに大きく分けて説明していきます。
入学試験
私が受験した大学院の専攻では試験科目に英語がなく、心理学用語・小論文・統計(データ読解)であることがわかったため、英語の学習は一旦脇に置き心理学用語の勉強に力を割り振っていきました。
基本的には河合塾KALSの大学院対策本を活用し、そこに出てくる単語を心理学辞典を用いながら深く知る、関連事項に当たる、という方法で知識を広げていきました。私が使っていたのは割とマイナーな辞典だったのですが、周りではキーワード&キーパーソン事典を活用されている方が何名かいました。大学院入学後も使えるので、本格的な辞典を購入するのもありかもしれません。
昔からですが受験ノート等はつくらず、テキストに直接コメントや辞典での該当ページを書き込むようにして、テキストを使い込む形で学んでいきました。
衝撃が走ったのは、テキスト3周目ぐらいの際に試験と同じ形の100-200字で用語説明をしようと試みたところ、まっっったく書けない、説明できないことでした。
ニュアンスや「こういうことだよね」というのは浮かぶのに、書けない。すごく気持ち悪い状態で、焦りを感じる体験でした。
一緒に試験勉強をしていた方も同様の体験をおっしゃっていたので、みんな大なり小なり体験するのかもしれません。
この経験は私にとって、アウトプットの大切さを感じるきっかけにもなりました。
「書けない…」と立ち止まっていても仕方がないので、とにかく書けなくても書くということを繰り返しました。週末も含め毎日1時間は確保するようにし、朝もしくは夜の時間に行っていました。週末で仕事がない日は、半日勉強、もう半日を次の項目で紹介する研究計画書といった形でまとめて行うこともありました。
小論文・統計に関しては過去問を解いてはみたのですが、回答があるものでもないのでほとんど何もしませんでした。唯一したことは、試験時間が一杯一杯なのはわかっていたので、過去問を実際に回答しながら時間感覚を体に馴染ませるようにしたことでした。
この辺りは予備校などに通うと添削してもらえたりするものなのかもしれません。
研究計画書
今回の受験に関わるさまざまな準備の中で一番時間をかけた(かかった)のがこの研究計画書の作成でした。
恐らく多くの大学院で「研究計画書」の提出が求められると思います。
その名の通り、自分が大学院で何を研究したいのかを書くものです。
その意味するところはわかるのですが、そもそも何を書いたらいいのかわからないということで、Webページを渡り歩き本も頼りながら調べ、複数のWebページや本で言われている項目はおそらくマストになる項目だろうと考えピックアップしました。その時参考にした書籍はこちら。
やっとこさ中身を書こうと試みる訳ですが、最初は何も書けませんでした。
それぞれの項目に、ふわっとした言葉が一行ずつぐらいしか出てこない。
改めて公開されている研究計画書を見ると、先行研究がたくさん取り上げられていたり、研究法が具体的に書いてあったりすることがわかりました。自分の中にアウトプットできる先行研究や研究法の蓄積がなかったので、書けるわけがなかったことに気づきます。
そこからは、自分が研究したいと思っているテーマを念頭に置きつつ、先行研究をひたすら調べ、関係が強そうな論文が参考にしている先行研究を調べ、専門書や関係書類は端からポチって読み進めました。
この時期(2021/2〜2021/8)で読んだ上でメモってた論文は26本程度、関連図書は12冊程度でした。研究をされているみなさまからすると、まだまだだなと言われるレベルなのは重々承知ですが、ひたすらやってみることで、重要な論文や論点、大元になっている論文や書籍を特定することが少しずつできるようになった気がします。
そのインプットを携え、現在どんな研究が必要とされているのか、何をどうやって研究するのか、という研究計画を考え書き出していきました。書いた内容も、素人が見ても良いものかどうかはわからない(本当にわからない!)ので大学院を出られた方に見ていただいたり、仕事仲間にフィードバックをもらい、ブラッシュアップしていきました。
こちらも時期に応じてですが論文・書籍のインプットを毎日1時間ずつ継続し、関連しそうなポイントや重要なポイントの整理を行いつつ、提出(7月)が近づいてきてからはまとめて時間をとって文章化、ブラッシュアップをしていきました。
自ら書いた研究計画書は何度読み返したかわからないぐらい読み、言葉を磨きました。恐らくA4一枚にかけた時間としては人生最長だと思われます。その分自分のやりたいこと、考えていることのエッセンスが詰まった研究計画書になりました。
モチベーション維持や習慣化のために行っていたこと
働きながらの受験というのはほとんどの人にとって大変なことだと思います。
自分の経験や周囲で勉強されていた方の様子からも、時間の確保、モチベーションの維持、睡眠不足に肉体疲労などなど、困難は簡単に浮かんできます。
私は自己理解が大切だと思ったのですが、自分に合った勉強法やモチベーション維持法を理解しておくことが一番重要だと思います。
私の場合は、「習慣化」と「周囲への宣言」がポイントでした。
「習慣化」は、私が日常に予定を組み込んでしまえば継続することは苦じゃない人間のため(毎朝の瞑想・ストレッチ・筋トレなどをかれこれ2年以上継続中)いかに日々の中にストレスなく溶け込ませるか、気をつけました。
普段朝から夜まで面談やデータ分析をしているため、2時間以上の時間確保は難しいと判断し、試験勉強1時間・研究計画書作成関連1時間と決め、朝晩に組み込みました。(具体的には朝の筋トレ後1時間は試験勉強、22時以降は研究計画書作成)
すでにその予定が入っていれば仕事の予定はそれ以外に入れるしかなくなり、時間確保ができました。決めてからはあとは愚直にやり続けるだけということで、ペースを崩さずやり続けました。
もう一つ「周囲への宣言」は、自分に発破を書ける意味で友人や関わる会社のメンバー、キャリアモデルコミュニティメンバーに大学院受験をしようと思っているということを宣言していました。
昔の私であれば、「落ちたとき恥ずかしい、かっこわるい」と思って言わずに黙々とやっていたと思うのですが、「落ちたら落ちただし、今やっていることを伝えてみよう」と思うようになっていました。
そしてこれが意図せずいろいろな効果がありました。
本当に私の周りは素敵な人ばかりだなぁと痛感したのですが、みんな応援してくれました。そして手伝えることを聞いてくれたり情報をくれたりと、いろんな支援をいただきました。
また、話すことで「なんで受験するの?」「どんな研究をするの?」という質問をほぼ100%いただくため、その度に自分が受験する理由、研究したい内容とその背景をお話しすることになり、結果的に自分の受験理由をより明確にでき、研究内容のブラッシュアップにもつながりました。ひょっとすると面接試験の練習にもなっていたかもしれません。
私の場合はこの2つがポイントでしたが、最初に書いたように自分に合った方法を捉え、最大限それを活かすというのが大切だと思います。
朝型の人、夜型の人、自分でモクモクが得意な人、人に話すことで覚えられる人、視覚優位な人、聴覚優位な人、体感覚優位な人、、、などなど、自分がどのようなタイプかを捉えることで、それに最適な方法で学びを組み立てることができると、受験勉強も苦痛ではなく学びの時間になっていくと思います。
そういえば今回の受験時期は2021年の夏だったため、ちょうど東京オリンピックの時期と重なっていました。運良く(?)我が家にはテレビがなかったため、オリンピックに関する結果はネットニュースやYoutubeなどで見ていましたが、テレビがあったら確実に見ていたはずです…そう考えると勉強用の環境を整えることも大切だったのかもしれません。
これから
受験当日のことも自分の中では忘れられないのですが受験の詳細に触れてしまう可能性もあるので割愛しますが、とにかくコロナ禍での受験ということで、運営者の方も非常に気を遣っていただいたと思いますし、私自身も試験が終わってからはすぐに仙台に帰り、仙台駅前のホテルで自主隔離を5日ほど過ごしてから、日常に戻りました。
今後はキャリア、カウンセリング、心理学の最新知見を学びつつ、それを携わっている実践に還元し、実践から研究のテーマを得るという研究と実践の循環をつくれるよう頑張ろうと思っています。とは言っても、まずは基礎固め、型作り。研究法や統計など基礎中の基礎からしっかり学ぶつもりです。
とにかく動き始めたという段階ではありますが、今後学び始めていくと消えていってしまうであろう受験時の記憶・記録を残しておきたく執筆しました。
駄文ではありますが、なにかしらの参考になれば幸いです。
ここまでご覧いただきありがとうございました。