【社会人大学院学習記ー修士課程の学びー】
2年前に筑波大学大学院カウンセリング学位プログラムに入学したことを書きました。(「大学院受験記」)
あっという間に今春、2年間の課程を修了することとなりました。
本当に多くの方々の応援とご支援によってここに至ることができ、感謝の念に堪えません。
在学中にはほとんどこちらの記事は書けませんでしたが(汗)
節目のタイミングということで修士課程(博士前期課程)での学びをまとめようと思います。
自分自身の学びの振り返りとして、また社会人大学院を考えている人にとって何かしら参考にしていただければと思います。(私自身の体験と私の通った大学院での内容のため、普遍的な内容でないことをご了承願います)
研究とはなんたるかを実体験
先人たちが積み上げてきた膨大な知見、根拠に基づく理論構築と検証、まだ世の中に現れていない課題や実情を発見するための丁寧な分析。漠然と「研究」と言っていたものの解像度が高まった。さらに、様々な知見の積み上げを前にした時に、自らのちっぽけさを感じると同時に、先達の方々に対する畏敬の念が湧き、謙虚になった(と思う)。
自らの研究を進める中で研究に「ハマる」瞬間を味わうことができた。
研究を進めていたM2のある日、モデルの検討をしている時期にもやもやしながら散歩をしていて、頭の中でモデルの確認をしていると「ここにパスを引いたら理論的には妥当なのでは?」というひらめきがあった。実際に家に戻ってから試してみると想像以上にモデルの適合が改善し完成形となった。このひらめきと検証のプロセスでは純粋に「研究っておもしろい」と感じ、子ども時代に感じていた「わくわく」「ただただ楽しい」という感覚に近いものが湧き起こっていたと思う。生涯何かしらの形で研究にも携わっていきたいと確信を得た瞬間でもあった。
研究ガチ勢の大学院で学びたいと思い筑波大学大学院をチョイスしたが、その点でも当初の目的通り(苦しいながらも)研究にしっかり向き合うことができたという点でよかった。自分が何を目的として大学院にいくのか、は大学院選びにも関わる重要事項だと改めて感じる。当初思い描いてから修士入学までに4年近くかかったが(受験記参照)、それまでのプロセスも必要なものだったと過去の自分とその時々でアドバイスいただいた先生方にも感謝する気持ちが湧いている。
授業や発表会を通し先生たちのあり方から学ぶ
カウンセリング学位プログラムであり、臨床をされている方も多い学部であることから、ほとんどの授業で心理的安全性が確保されており、その中で伸び伸びと学ばせていただいた。学生一人ひとりの研究に関する発表会もあるが、そこでも丁寧なフィードバックがあり、次に向けて歩みを進められたと思う。
その中でも一つ特に印象的だったエピソードとして、夏のある日、私が教室に入る際に「あっつぅ」と口から空気が抜けるぐらいのボリュームでつぶやいた時、教室の前の方にいらっしゃった先生が「今日は暑いですよね」と返答を下さったことがあった。正直誰の回答も想定していない、本当に息が漏れた程度のつぶやきだったにも関わらず、それをキャッチし、しかも返してくれるという出来事に仰天した。返答への嬉しさもありつつ、相手の発するサインを逃さないプロフェッショナリティに鳥肌が立ったことを覚えている。2年間の中でも特に印象的だったシーンのひとつである。
院生室で作業をしている際に一言声をかけてくださったり、研究室でのお茶タイムに誘っていただいたりと、そうした一つ一つの細やかな気配りができる先生方を人として尊敬できると感じた。自分自身対人援助職をしている中で「あり方」は大切だと思っているが、先生方の誠実なあり方を実際に見て体感できたことは財産である。
学びに貪欲な人々との出会い
日本人は世界的に見ても学ばないと言われているが(パーソル総研『グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)』等)、社会人大学院は学びたい大人ばかりの環境で、いろいろな刺激を受けた。そもそも受験の段階で倍率4-5倍という数字に驚愕したことを覚えている。
同期や先輩には民間の研究機関で働かれている人も多く、その専門性に憧れつつ刺激をもらった。また、自分とは異なる領域でのカウンセリング実践に携わられている方も多く、現場が変われば実践も変わることを具体的に知ることができた。研究テーマもそれぞれの実践の中で見られた課題を取り上げており、研究発表を聞くたびに様々な領域のことを知ることもできた。
学んでいることを「意識高い系」と括られない環境に自らを置くことの大切さを感じた。
師との出会い
1年生の後半ごろに指導教員が決まったが、指導教員との出会いはとても大きかった。
そもそも大学院のオープンキャンパスで個別相談をさせてもらい背中を押していただいたのも今の先生であり何かとご縁はあったのかもしれない。統計の授業はこれまで受けてきた講義の中ではるかにわかりやすく「統計=数学=苦手」という先入観から解き放ってくれた方であった。ゼミに所属してからは専門知識や最新のトレンドをご教示いただきつつ共に研究を楽しみながら進めていただくスタイルで、自分自身が研究にハマるきっかけをいただいた。これからも研究のブラッシュアップのために学ばせていただく予定であり、そうした方と出会えたことは研究だけでなく人生においても大きな財産だと思っている。
また指導教員以外にも様々な領域や研究におけるプロフェッショナルの先生方がいらっしゃり、コメントや励ましを随所でいただいた。先にも書いたが先生方との出会いは大学院での大きな頂き物だと思っている。
資料作成や登壇におけるクオリティの向上
根拠を持って取り上げる、論理的に説明する、人前でわかりやすく話す。大学院入学前から行ってきていたことだが、自分の感覚の中でそのクオリティに大きな変化があった。
どのような根拠が、どういう論理で繋がっているのか。その根拠や論理の限界。そうしたものを自らの研究を通して考えた結果、以前よりも俯瞰的・論理的に見ることができるようになったかもしれない。
まだ言語化が進んでいない部分だが、明らかにここ数ヶ月の発表機会は以前のものよりもクオリティが上がったように感じている。これまで苦手だと感じていた講義やファシリテーションにも若干光明が差した感もあり、実務面でのレベルアップもありがたい学びだった。
おわりに
ここまでお読みいただきありがとうございます。
本当は修論が一段落した3月中にじっくり振り返って書くつもりが、年度末のバタバタのせいかあまりじっくり振り返ることができませんでした。不徳の致すところです…。
それでも上記点はすぐに浮かんできたことであり、取り急ぎまとめてみました。
最後の「5 資料作成や登壇におけるクオリティの向上」のように実務をする中でじわじわ体感してくる学びもあり、今後思い浮かぶ際に追記していけたらと思っています。
私個人としては今後も研究修行を続けていくつもりで、まずは修論を論文掲載に向けてブラッシュアップしていきます。その先の博士課程も見据えながら時間を使ってコツコツやっていく予定です。
ふと2018年にリバネスの井上浄さんの講演で「さぁ研究だ!」というメッセージを聞いてわくわくしつつ「自分は何を研究するのだろう?」と考えたことを思い出しました。徐々にその答えに近づいているのかなとも思います。
これからも研究と実践の両輪をぐるぐる循環させていくために実践も進めつつ、自分の人生を使った「キャリア実験」も続けていきます。
私流に言うならば「さぁキャリア実験だ!」ということで、次はどんな実験をしようか…わくわくしながら妄想していこうと思います。